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 そんな予想をしながらも私はあれからずっと志築くんに聞けないでいた。  それに、聞いたところではぐらかされる気がしたのだ。だからは私は今の状況を受け入れているわけではある。  が。  「…何をすればいいのかしら」  いつものシフト休みの日。最近まで一日は彼と過ごしていた。  もう一日は家のことをすれば休みは終わり。  たった一か月半ほどサイクルだったのに、それに順応してしまったせいで連休がとても暇になった。  初日は家のことをして終わった。  翌日は好きなことをすればいいのにカフェに行ってもなんとなく落ち着かない。というよりも手持無沙汰感が否めない。  ひとりの時間が心地よいはずなのに、なんだか寂しいと思う自分居る。  「…へんね」  最近ずっと志築くんのことを考えている自分がいる。気づけばもう一か月近くまともに話していなかった。  仕事のことは話すけど、食堂でも顔を合わせないせいで普通の会話、というかどうでもいい話をする時間がない。  「…どうでもいい話、したかったのか、私」  彩羽さん。  思えばいつも彼から話かけてくれた。  口下手な私に話題の提供もしてくれた。  内容は本当にくだらない話だったりどうでもいいことだけど、私はただ黙って聞いていた。  時々意見を求められて答えるぐらいだった。  「…やっぱり、おかししいわ」  いつの間にこんなにも彼の存在が大きくなってしまったのだろう。  胸がぎゅっと押しつぶされそうになって、抱え込んでいたクッションに顔を埋めた。  
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