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 志築くんに「彩羽さん」と呼ばれて立ち止まった。  なんだか久しぶりに呼ばれてちょっとだけ驚いた。そして何故か胸がほっこりと温かくなる。  どうしてだろう、と考えていると志築くんが電気を付けたらしくパッと室内が明るくなった。  「これ、片っ端から探す…か」  「……そうね」    気が遠くなりそうな量だった。  倉庫と言われるほど大きいわけではないが、それなりの広さのある部屋だ。しかも棚が三階建て。どこに何が置かれているのかわからないし、どれも段ボールに入っているものばかりで、大変困る。  「とりあえず、開いていないもので送付状に一昨日のサインがあるものを探せばいいわけですね」  志築くんの意気込みに小さく頷き返した。  彼はシャツの袖のボタンを外すと徐に捲り上げる。  引き締まった二の腕。その腕が折り曲げられて、窮屈だった首元も解放された。  冷蔵室で涼しいを通り越して少し寒いぐらいだけど、こんな大きな荷物を運ぶとなれば暑くなるのは目に見えていた。  「さっさと見つけて帰りましょう」  小さく一つ深呼吸をして「よし」と意気込むと、ずかずかと冷蔵室に入っていく。その頼もしい背中を少しだけ眺めて、置いていかれないように彼を追いかけた。    
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