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 「…コミュニケーションの勉強をしたくて」  「コミュニケーションの勉強?」  「ええ。その、会話はあまり得意じゃないから、いろんな人と話せれば少しはマシになるかなって」  坂巻さんは私をポカンと見上げていたけれど次の瞬間可笑しそうに肩を揺らす。どうしてこんなにも笑われているのか理解できなくて思わず眉を寄せた。  「コミュニケーションの練習するのに婚活ですか??」  「ちょっと軸が違うと思いますよー」  あれ、そうなの?と首を傾げていると島谷さんからそもそも論が返ってきた。 「それより先に携帯を変えないとアプリをダウンロードできないんじゃないですか」 「そんなに古い携帯使っているんですか?!」 「峰さん、ガラケーですよ。ね?」 島谷さんの悪気のない説明に「うん」と頷いた。事実だし恥ずかしいことではないのに何故かとても居たたまれない。 「すごい!貴重!」 「…普通に売ってるわよ?」 「でもスペック考えるとどうしてもスマホになるじゃないですか」  たしかに。  坂巻さんの言葉に返す言葉もない。   「まずは携帯を変えて、えーっとメッセージツールを使うところから始めましょう?」  「それなら使ってるわ」  「それは仕事上で、ですよね?私達が言ってるのは普段のコミュニケーションとしてのことですよ。そもそもそこから慣れないとできないです。峰さんいつも『了解』ばかりだし。キャッチボールにすらなっていないじゃないですか。投げて受け止めて終わりでしょ?投げ返さないと始まらないですよ」  島谷さんの圧倒的正論に反論ができなかった。  
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