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携帯を変えることに少し躊躇いがあった。
あまりシステムには強くないし、そもそもこんなハイテク技術を使いこなせるはずがない。私のスペックとして今のものでちょうどいい。
それに、新しいものに変えても所詮私に連絡をくれる人は家族だけ。
無駄に良いものを持っても宝のもち腐れ。写真を撮る趣味もないしSNSをしているわけでもない。
だけど、坂巻さんの次の言葉に若干希望の光が見えた気がした。
「携帯変えて、連絡先教えてくださったら私達のグループに招待しますよ」
「グループ?」
「はい!婚活の情報共有場です。パーティーの情報とか飲み会とかですね。あ、彼氏ができればそのグループを抜けられるので、皆そこを目指してるんです」
「出戻りもありますよー」
「島谷さ~ん?」
「はーい、黙ってまーす」
ちなみに坂巻さんは出戻り組だそう。わずか三か月で戻ってきたらしい。
何が敗因だったのか、皆に共有して次に生かす場だという。
意外とちゃんとしてるんだ、と感心した。
「なので、まず峰さんがすることは」
「携帯を変える」
「はい、そうですね」
「そしたらアプリを入れればいいのね」
「ですです~」
島谷さんの軽快な返事にひとつ頷いた。
つい数秒前まで尻込みしていたのに、今はとても前向きだ。
気持ちも明るくなった。
ただ、とても上手く乗せられている気はするけれど。
私は自分の気持ちが変わらないうちにその夜閉店前の携帯ショップに飛び込んだのだった。
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