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 ジャルダンはフランス語で庭、という。  つまりガーデンパーティ。立食なら最大150人ほど入る。  四月から十一月はジャルダンを解放する。ただ、プランナーにはあまり勧めないようには通達している。  というのも。  「…雨の日はどうするんですか?」  「ジャルダン希望のお二人様には予め雨天の場合もお知らせして、参列者の人数に応じてロワ、もしくはレーヌを押さえます。もちろん、その分費用は嵩みます」  「ですよね」  季節によっては台風だったり、突然変異で雨が降ってくることもある。  天候については事前に何度も説明して、了承を得たうえで披露宴は行われる。  今は寒々しい空の下、ジャルダンが寂しい。  いくら人工芝といえど、やはり温かさのある季節と比較すると比べ物にならないぐらい輝きが失われる。  「あと三カ月もするととても綺麗な庭になります。今は寂しいですが」  「冬ですしね。仕方ないと思います」  志築さんは肩を竦めてジャルダンの景色に向けていた視線をスライドさせた。  「次に行きましょう」と彼が催促しているような気がしたので小さく頷くと、次の案内場所に向かった。
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