7/48
前へ
/211ページ
次へ
 「俺が休んでいる間に何がどうなってこうなったんですか」  そんな決意をした僅か数日後の夜。  私は今、何故か志築くんにとても怒られてた。 笑顔、と言っても目が全然哂っていない。冷房要らずなぐらい部屋が寒い。  「…なにが、どうとは?」  「携帯を替えるまでは理解しましょう。インフラを整えるのは大切です。それに坂巻さんとラインの交換はわかります。で、どうしてそんなグループに入る必要が?」  ごおおおおお、と志築くんの後ろに氷山が見える。それがだんだん大きくなるのは気のせいじゃないと思う。  「…こ、コミュニケーションの練習を」  「それが何故マッチングアプリに飛躍するんですか?」  ピキリと志築くんのこめかみに青筋が見える。でもそもそもどうして彼がこんなにも怒るのか理解できない。  今日だって、仕事終わりに突然家を訪ねてきたのだ。一応お土産という手土産を持って。  「…私がどこで何しようが関係ないでしょう?」  「…へえ?そんなこと言うんだ?…なんだよ、全然伝わってないって」  何が、と言う前に視界が反転した。気づけば私を見下ろす彼と目が合う。  驚きすぎて声も言葉も出ない私に彼は冷たい眼差しを向けた。  「……俺が、どれほどあなたを想っているか、どんな想いであなたを見つめているのか、知らないでしょう?」   彼は床に広がった髪を掬いそれに口づけた。その目は悲しみと呆れと見たことのない欲と怒りを孕んでいる。  「あまり追いかけると戸惑うのはわかっていた。それでなくとも踏み込みすぎて、あなたが戸惑っていることに気づいていた。だから抑えこんでいたのに」     志築くんの指が頬を撫でる。その目は「どうして?」と悲しみに暮れていた。        
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4481人が本棚に入れています
本棚に追加