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 志築くんは何か勘違いしている。  そもそもとても重大なことをスルーしてしまった、気がする。  「…誰ですか?その馬鹿野郎は。俺が絞めてきます」    少しドスの効いた声で志築くんが促す。  組み敷かれるとか、こんな展開とか、人生で一度も経験してこなかった私は、話の内容を半分ほどしか理解できていない。この状況でいっぱいいっぱいだ。  「…ち、ちがうの」  「何が違うんですか」  「誰にも言われてない」  「じゃあどうして」  「…スーパーで遇った時、とても素っ気なかったから」  「え?」  志築くんの目が驚くほど大きく見開かれた。  ここにきてようやく色んなことが行き違っていることに気づく。  「…それに、風邪ひいた後から少し余所余所しくなったもの。だから、私が気づかないうちに志築くんに何かして愛想つかされたのかと」  志築くんが「あーーーー」と頭をぐしゃぐしゃと掻きだした。  そして、身体を退かせると、未だ天井を向いたままの私を抱き起してくれる。  「…つまり、まとめると。俺の態度がおかしくて、彩羽さんは勝手に『俺に愛想尽かされた』と思い込んで奇行に走ったということですね?」  「…奇行って」  「奇行以外表現の仕様がないですよ。そもそも、一度に数人と同時並行でやり取りするのって相当疲れますよ?多分彩羽さんの性格的に合わないですし」  痛いところを突かれて思わず黙り込んだ。  実際、登録作業するだけで面倒くさかった。  趣味とか好きな食べ物とかあまり考えたことない項目ばかりだ。    坂巻さんを始め、そのグループの方から色々アドバイス頂いたけれど、その登録作業が終わり、始まった途端複数人から通知が届いた。  でも、返信がなかなか終わらない。  皆返信が速くて自分が追いつかなかった。  三往復もしないうちにため込んでいた。それが昨夜のことだった。  「…どうしてわかるの」  「分かりますよ。ずっとあなたを見てますから」  志築くんは呆れたように肩を竦めるとぐちゃぐちゃになった髪を優しく整えてくれる。  その目がさっきと打って変わって優しげなものになったことにひどく安堵した。  
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