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志築くんとオタメシのお付き合いをすることになった。  期間は三ヶ月。その間、キス以上はしない。  ただ、世の一般的な恋人たちがどんな風に過ごすのか、日常生活をもって体験するというやつらしい。  本当は普通に「恋人」として付き合いたいのだ、と彼は本音を打ちあけてくれたけど、私の経験値の低さを考慮して「オタメシ」で譲歩してくれた。 ____じゃないと俺、さっきみたいに押し倒してしまう自信あります  真顔でそんなことを言われたら経験のない私はだいぶ構えてしまった。  ただでさえ、触れられるだけでもガチガチに身体を硬くさせてしまっている。  志築くんもそれを理解してくれているし、仮にそのことで逃げられるようなことがあるのも嫌だと言う。だから『オタメシ』で、少しずつ「お付き合い」にも「志築くん」にも慣れてほしいと笑った。  「今から三ヶ月だとちょうどクリスマスですね」  志築くんはカレンダーを見て呟く。    クリスマス、と言われてもイベントに縁がない私には「今年も終わりね」という感想しか出てこない。  「イヴは食事をしましょう。当日は彩羽さんから答えを聞かせてください」  「……答え?」  「ええ。この付き合いを『オタメシ』で終わらせるか、それとも本当の『恋人』になるか。俺はお互いちゃんと“好き”だと思って恋人になりたいです。だから教えてください。その時彩羽さんが俺のことをどう思っているか、を」  それはつまり、私が志築くんに告白する、ということなんだろうか。  そのことを考えただけで、カァっと顔が熱くなり志築くんの腕の中でおろおろとするのだった。  
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