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 「半分こにしましょう」  お皿に乗せたケーキはとても上品で可愛らしかった。  それをお互いひとつずつ前にして志築くんが提案する。  「ええ、いいわよ」  「じゃあ、彩羽さん、イチゴ食べていいですよ。俺栗もらいますけど」    どうぞ、と言えば彼は真っ先に栗を食べた。  どうやら先に好きなものを食べる派らしい。  クリームはあっさりとしていたわりにしっかり味が残った。  でも全然クドくない。  「おいしい」  「人気になるのもわかります」  「でもよく買えたのね」  「平日だとわりと変えますよ。銀座だとほら、ビジネスマンも多いし。あ、モンブラン食べますか」    彼が「どうぞ」と出してくれたお皿をうけとり交換する。  「…栗ね」  「濃厚ですよね」  「ええ。でも自然の栗の甘味だから」  ケーキの感想を言い合いながらすべてお腹に収めると、食器を洗う。  志築くんはいつも「座ってていい」と言ってくれるけど一緒に洗った方が早いから一緒に洗う。私が休みの日はこのやり取りと逆のことをする。  だからもう「片付けは一緒にやる」でいいんじゃないか、と決めたのだった。
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