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 キスをした。志築くんとキスをしてしまった。  そのことを今になってじわじわと実感して、顔が熱くなる。  彼は彼で「かわいいなあ」と言いながら私を抱き締めると何故か頭にキスをしていた。  「慣れですよ、慣れ」  「…慣れるの?」  「初めて抱きしめたときも同じこと言ってましたよ」  それを指摘されればグウの音も出ない。彼は楽しそうに笑いながら「それと同じ」と付け加えた。  「だったら、早く慣れるに越したことないと思います」  「…心臓が持たないわ」  「大丈夫です。キスで心臓発作になった人はいないはずだから」  だから、と彼は続ける。  「キス、しましょう。俺と、慣れるまで」  その言葉が合図のように、唇が塞がれる。  それと同時に身体がソファーに沈む。助けを求めるように、彼の服を握りしめれば、その手が攫われて彼の首に回されてしまう。  「もう片方もこっち」    私を見下ろす彼の顔が近づいてくる。両腕を彼の首に回して、これじゃまるで私がせがんでいるようだ。  「ゆっくりでいいですよ。でも嫌ならちゃんと教えてくださいね」  彼の目が私の本心を探る。怖くないか、怯えていないか、嫌悪感がないか、きっと彼は気を遣ってくれているのだろう。  「…いや、じゃないわ」  「……なら、いっぱいキスしたい…。加減、……できるか分からないけど」  志築くんはそういったど、加減してくれているのは分かっていた。  その証拠に、ずっとノーマルのキスだ。  普通の唇が触れ合うだけのキス。  キスにも種類があることぐらい知識では知っている。  だけど、今自分の身に起きていることにいっぱいいっぱいで志築くんの態度に甘えさせてもらっている。    
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