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 志築さんは肩を竦めると支配人に呼ばれて隣の席に座った。  ついでに「飲み物を」と支配人に言われたので仕方なく給湯室に向かうことにする。  志築さんの言うことはわかる。  やはり、式場によってコンセプトはあるもの。白を基調としたTHEお姫様のような会場ではなくて良かった、ということ。  私は……そういうのも好きだけどね。  二人分のコーヒーを入れて戻ってくると、予約の埋まり具合や、具体的な挙式プランについて、支配人が志築さんに説明していた。  その間に試着用の制服を事務所に取りに行き、空いているロッカーの確認や鍵の準備を行った。志築さんへの説明が終わったころを見計らい、というか内線で呼ばれたのだけど、彼の背丈に合いそうな制服をいくつか持って、更衣室に案内する。  「ここ、使ってください。それと、ジャケットとスラックスは試着して、適当なサイズをこちらに記入してください。あと、シャツはこちら。念のためベルトもあります。靴は革靴なら特にブランド問わないのでご自由に。一応社割のきくブランドもありますが使っている人は半々です」  彼は今日、ジャケットにタートルニット、デニムととてもフランクな装いだった。  その恰好じゃジャケットのサイズは合わせられないだろう、と試着用のシャツも渡す。ついでに服装についての説明を加えて更衣室を出る。  五分もせず、志築さんが出てきたので、そのまま従業員扉まで送って別れた。
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