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 その日から『キスに慣れよう』レッスンが始まった。命名通りそのままの意味だけど、毎日のように繰り返されるそれは、彼の言った通り時間の問題だった。  「今日から少しレベル上げてもいいですか?」  そして、クリスマスまで残り一か月を切った頃。静かに唇を離した彼がそう言った。  今、私たちはソファーに座ってテレビを見ていた。そんな時「彩羽さん」と呼ばれて振り返ったらキスされた。  初めはこんな不意打ちにもあたふたしていたけど、今はごく普通に受け入れてしまっている。  ちなみに、彼はキッチンだったり、こうしてソファーに座っているときだったりところかまわず二人の時はキスをしてくる。  仕事が終わって「お帰り」と出迎えたときや「おやすみ」と別れ間際は必ず、もれなくキスが付いてくる。(なんかの景品みたい)  おかげですっかり慣れたわけで、そんな私に志築くんが提案した。  「…レベル上げ?」  「そうです。もう、キス慣れたでしょう?」  「…慣れてないわ」  「そうですか?嬉しそうに受け入れてくれるのは分かりますけど、前ほど照れなくなったじゃないですか」  ……待ってほしい。今なんて言った?  「…ウレシソウ?」  「はい」  「誰が?」  「誰って彩羽さん…え。嬉しくないんですか?」
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