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 『仕事終わりに行きたいところあるんでついてきてくれませんか』  その数日後のこと。志築くんからメッセージが届いていた。  ちょうど仕事が終わって更衣室で着替えをしながら携帯をチェックして気が付いた。  『了解』  相変わらず素っ気ない返しだけど、スタンプで返すという技を身に着けた結果、幾分まろやかになっていると思う。  ちなみによく使うスタンプはクマの『クマタ』というスタンプで関西弁のクマのスタンプだ。愛嬌のある顔立ちで、私のお気に入りのスタンプ。ちなみに彼はよく猫のスタンプを使う。彼曰く、私に似ているらしい。    「お待たせしました」  「ううん。全然待ってないわ」  志築くんと待ち合わせをする場所は、職場から一駅離れた交差点だった。  もう夜も八時を過ぎたこの時間だ。同僚にも会わないだろうということらしい。    「どこ行くの?」  目の前には時々ドラマでも使われるだろう、ライトアップされた並木道。  休日のこの時間なのに、人がたくさん行きかっていた。  「ただの散歩です」  散歩?と首を傾げる私に志築くんは視線の先にあるライトアップされた並木道を眺める。静かに私の手を繋ぐと柔らかい笑顔を浮かべた。  「イルミネーションを見るだけの散歩です。ただ、俺が彩羽さんとこういうところを歩きたくて。…ちょっと恋人同士っぽくないですか」  
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