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 それはお泊まりという意味だろうか。  でも明日も仕事だ。お互いに。  理解しきれない頭の中でぼんやりと理性が騒めく。きっと今までの私ならきっちり断れていたはずなのに。  「何もしない。ただ、抱きしめて眠りたい。あの日のように」  それは一度だけソファーで寝落ちて朝を迎えたあの日のことを指しているのだろう、と直ぐに分かった。私が志築くんが起きる前に先に家に帰ってしまったあの日のことだ。  彼はとても拗ねていた。「起きたらいなかった」と。「朝ごはん食べたかった」と。    「……やっぱり駄目ですか?」  くぅん、くふーん。と尻尾を垂らして耳をしょげた志築犬が私のお伺いをたてている。  こんな風に強請られると私が断れないと彼は分かっていてやっているのだ。  「………何も、しない?」  それはそれで少し残念、かも。  なんて思う自分もいることに驚きだ。    「彩羽さんの嫌がることはしません」  きっぱりとはっきりと言いきった志築くんの表情はとても真剣だった。別に何されたって構わない、なんて経験のない私が言えるはずもないけれど。  「……あの、お手柔らかに」  傍にいたい、という欲望が勝ってしまった。  志築くんに抱きしめられたまま眠りたい、という欲望だ。    「大丈夫ですよ。ゆっくり進みましょう。全部慣れればどうってことないです」  志築くんは嬉しそうに尻尾を振った。パタパタと遠慮がちに触れていた尻尾がだんだんと速くなる。  「俺が教えてあげます」  ね?といわれ「はい」しか言葉が出てこなかった。志築くんがあまりにも嬉しそうで可愛かったからそれ以外の答えが見つからなかった。  
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