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気もそぞろになりながら自宅に向かった。
気がついたら志築くんがいつもよく行くお店で夕食をテイクアウトしてくれていて、気がつけば志築くんの部屋の前で声をかけられていた。
「彩羽さん?」
「あ、えっと、なに?」
志築くんが苦笑している。
「そんなに緊張しなくても」
今日は手を出しませんよ、と付け加えた。
その言葉は想像力の乏しい私でも何をスルことか理解するには十分だった。
だから、ホッと安堵したけれど、どこか残念な気持ちもあった。
とはいえ、明日はお互い仕事。
それに、私が初めてできっと色んなことがスローペースだろうと予測できる。
翌日は休みの方がいいと素人でもわかった。
志築くんがロックを解除して扉を開けた。
彼に続いて玄関に入る。
「あ、彩羽さん先に着替えとか持ってきてください。その間に並べておくので」
彼の言葉に考えるまでもなくただ頷いて回れ右をした。エレベーターに乗って自宅部屋の扉を開けた瞬間、へなへなとその場に座り込んだ。
「……一緒に、寝る」
それってつまり。そう考えて顔がカアっと熱くなった。
小説などで時々出てくる言葉を使うと、同衾というやつだ。
時代によってはただそれだけでお手つきとみなされてしまう、アレ。
「……寝る」
今、改めて呟いてみて自分がとても破廉恥なことを考えて悶えていることに気づく。
まさか自分の人生に同衾なんてハプニングがあるとは思っていなかったのだから。
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