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 案の定、支配人の予想通り、週明けのオフィスは色めき立った。  男性プランナーが苦笑いするほどに。  そして。  「志築さんの補佐は峰さんにお願いする」  途端に大きなブーイングだ。あからさま過ぎてちょっと引く。  そんな大ブーイングの中、プランナーの中でも特に結婚に対して貪欲な坂巻さんが手を合わせて提案した。    「歓迎会しましょう!ね!」  彼女の声はよく通る。それほど大きな声を出さなくてもざわめくオフィス内には響き渡った。  これには他の社員も両手を上げて賛同する。ただ、会社として歓迎会はありだけど、このメス力をギラつかせた彼女たちにこの新人君はどうするのだろう。  「あの、俺、彼氏いるんで。それでもいいですか?」  そんな盛り上がりに沸いたオフィスにポツンと落ちたやや照れくさそうなバリトン。  志築さんは恋する乙女のように視線を逸らせて躊躇いがちにカミングアウトした。  一体誰が予想できようか、そのとてつもなく大きな大きな爆弾に被害者はきっとこの場にいる全ての社員だろう。  その破壊力は凄まじく、一気に魂が抜けたように崩れ落ちる坂巻さん。  他にも何人かは呆気に取られて開いた口が塞がらないとは正にこのことだ。    
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