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にこにことしている志築くんを無言で見つめているとちゅ、とおでこにキスが落ちてきた。
目を丸くする私に「おやすみのキスです」と笑う。
「さあ、寝ましょうか」
「?!」
はい、とも、うん、とも言う前に、彼は私を子どものように抱き上げてしまった。
驚いて思わずがっちり彼に抱きつく。
「……自分で歩けるわ」
「俺が運びたいんです」
しっぽをぶんぶん振ってきゃんきゃん鳴く志築犬。彼は私を丁寧にベッドに転がすと、その隣に身体を横たえた。
布団をかぶり、彼の長い腕が腰を抱く。下敷きになって苦しくないのだろうか、と思っていたら、それを読んだように彼は言った。
「大丈夫です。この方が抱きしめてるって実感しますし」
向き合って器用に私を抱きしめたまま、彼は笑った。目を細めて眦を下げる。その瞳はとてもキラキラとしていて私は思わず見入ってしまった。
すると、それを咎めるように彼の手のひらが頬を包み込んだ。恥ずかしいような、照れ臭いような、いつでもキス出来そうなぐらいこんな距離で彼が甘く囁く。
「彩羽」
とくん、と声の代わりに心臓が返事した。
この距離だけで心臓がはち切れんばかりにうるさいのに、また一際大きく波打つ。
「二人のときは『彩羽』って呼んで良い?」
敬語もなしで、と付け加える。
お伺いを立てるような目線に、私は挙動不審になりながら小さく小さく頷く。
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