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志築くんがふと笑った気がした。でも表情はずっと甘くて溶けそうなほど視線が熱い。きっとこのままだと私は視線だけで焼死してしまう、と思う。
「彩羽」
その熱すぎる視線から逃げるように俯いた。自然と頬が緩みそうになり、慌てて唇を丸める。だけど、そんな私を引き上げるのは彼が実は意地悪で私より何枚も上手だからだろう。
「呼んでみただけ」
呼ばれて顔を上げればまた笑われた。甘い笑顔の中に悪戯っぽさまで見えてとんでもないほどかっこよく見える。これは、私にフィルターがかかっているせいかしら。
「嬉しくて」
「……うん」
私も、と言いかけて言葉が出なかった。
彼が動物の愛情表現のように、頭に頬を擦り寄せる。抱きしめられた身体がまたぎゅっと小さくなって頭から彼の匂いに包み込まれた。
少し窮屈なのに物足りなくて、心がふわっと温かくなるのに、なぜか寂しい。
嬉しいのに苦しくて、胸がぐっと詰まる。
まるで、何かつっかえたように、喉が詰まる。
「どうしよう、寝たくない」
はは、と呆れた声で笑いが落ちてきた。私はいろんな意味でドキドキして眠れない気がする。
「でも、彩羽抱きしめてると多分寝坊しそう」
「……目覚まし3つかけてるわ」
「起きられない自信ある」
志築くんはド真面目に言い切った。どんな顔して言ってるんだろうとおもってなんとか腕の中から顔を出したら待ってましたかのようにキスされた。
「おやすみのキス」
「…さっきもしたのに」
「唇はしてないよ」
にっこり笑った彼は「もう一回いい?」とおねだり上手なわんこに変身して、そのあと「もう一回」が何度も続くのだった。
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