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いつかそうなることを予想していた。そして、予想より随分早かった。そのことに戸惑いはあっても嫌悪はなかった。私は自分が想像以上に破廉恥だと気づいた。
そして、その時にがきた、と思った。思って覚悟した。覚悟というより、このまま流されればなんとかなるかしら、という彼に全て丸投げした結果だけど。
「……挿れないの?」
だから、つい言葉が出た。驚きの中に隠れた落胆に気づいて恥ずかしくなった。そして、もっと驚いたのが志築くんの返しだった。
「……挿れていいの?」
挿れないでセックスできるの?と思わず言いそうになったけど、たしか前戯で終わることもある、と予習したことを思い出した。
そして、酷く落ち込んだような自分の言い訳のように、これまでのことを話してしまった。
「なんだよ、言ってよ」
志築くんは呆れたあと、何故か笑った。
そして、嬉しい、とも言ってくれた。
私は彼のように素直にすぐに言葉にできないせいでとても迷惑をかけていると思う。それなのに、彼は一言も文句を言うこともなく優しく包み込んでくれた。
彼ならいいかな、と思った。
ううん、彼がいいと思った。
本当はそう言いたかったのに可愛くない私は「勢いが大事だ」とつい嘘をついてしまった。
ーーーーー彩羽、抱きたい。いい?
それなのに彼はそんな私を一言も責めず、むしろその先を望んでくれた。
年上のくせに全然経験もなくて、知識も付け焼き刃もいいところできっと色々と迷惑をかけるだろう。
ううん、もう十分迷惑をかけている。
それでも。
「……抱いて、ください」
彼がよかった。
彼が欲しかった。
恥ずかしさも怖さも全て飲み込んでありったけの勇気を振り絞った。
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