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志築くんは私を抱き上げると寝室に向かった。
今更ながら凄い格好になっていることに気づいたけれど、結局ベッドに降ろさられた後は中途半端に脱げていた服を脱がされて、パンツ一枚にされた。
「あ」
「ん?どうしたの?」
いくら冬でも汗はかいてなくても一日働いてシャワーを浴びていないことに気がついた。
今からのことを考えるとどうしても躊躇ってしまう。
「シャワー、を」
「もう遅いから」
志築くんは苦笑すると、首の後ろの襟を持ち上げて勢いよく服を脱ぎ捨てた。意外と引き締まった身体に厚みもある。彼のバランスの取れた体躯に見惚れていると、当の本人は全然気にすることなくズボンまで脱いでしまった。
「あとで一緒に入ろう。ね?」
あとで、いっしょに、はいろう、
「なにに?」という言葉は飲み込んだ。
その代わり、小さく首を縦に振る。
「そこは嫌じゃないんだね」
「…え?どうして?」
某リサーチ会社によればお風呂に一緒に入るカップルの方が長続きする確率が高く、仲の良い関係が築けるとのことだった。
それに、恥ずかしいことをしておいて見られるのは嫌、というのは無い。
少なくとも私はきっと、この行為の方が何倍も恥ずかしい。それにうまくできないのも前提にあるせいか、非常に申し訳なさもある。
それならお風呂に入る方がうまく入れる。
間違っても溺れることはないはずだから。
「『恥ずかしいから嫌』って言われると思っていたから。それならこれから毎日一緒に入れる」
まだ一度も一緒に入っていないのに、もう毎日一緒に入ることが決まったらしい。
そもそも、単身者のバスタブはそれほど大きくない。志築くんひとりでいっぱいいっぱいなんじゃ。
そんな余計なことを考えていると彼が両手を私の耳の横についた。キシっとベッドが僅かにしなる。それだけで全身に力が篭った。
「じゃあ、痛かったり気分悪くなったら手を上げてください」
「……え?」
「いや、そこ笑うところ」
そんな私の緊張を察してくれたらしい彼はユーモアな言葉で気分を解そうとしてくれているようだった。だが、緊張し過ぎて笑えなかった挙句、彼の下着の盛り上がり具合を見てしまったせいか、私の心臓は急速にバクバクと音を立て始めている。
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