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 初めこそ違和感を感じていたけれど、しばらくするとそれほどでもなくなった。  というか、そこまで気にしていられなくなった、というのが正解だ。  「彩羽」  志築くんの呼びかけに応えるようにキスをする。自分でもわかるぐらい拙く辿々しいキスだ。  それでも彼は笑わないし呆れない。その代わりキスをやめてしまうとこうして催促してくるのが少々厄介だ。  「んん……っ、ぁ、」  慣れ始めた胎内に物足りなさを感じて切なくなった。彼を縋るように見つめれば瞳の奥が悪戯に笑う。  「寂しくなった?」  さっきまでそこにあった存在が今はない。  一本から二本にいつの間にか増えた質量に心地よさを感じていたのに、それがゼロになってしまった。  もどかしくて物足りなくてどうしていいのかわからない。くしゃみがでそうででないようなそんな感覚に私は一二もなく頷いた。  「でも、俺も限界」  ごめんね、と彼は私のおでこにキスをするとベッドの備え付けの引き出しを開けてその中から四角いパッケージを取り出した。  高校生の保健の授業で初めて実物を見せてもらった時は何も感じなかったのに、今はもう、湧き上がる感情に心臓の音が鳴り止まない。  「はやく、彩羽とひとつになりたい」  彼の穏やかな顔を見上げていれば、金平糖が落ちてきた。ひとつ、ふたつ、またひとつ。  「大切だから、欲しくてたまらない」  ちゅ、と目尻に落ちたキスと共に彼は私の足元に座り込むと、ごそごそと避妊具をつけ始めた。    それを見ていいのか、駄目なのか、この時はどうすればいいのかよく分からなくて無駄に視線を彷徨わせていると、足元から忍び笑いが聞こえる。  「もう、どこまで可愛いかな。本当にさ」  彼から私の表情が見えていたのか、と思うととても恥ずかしい。けれど、羞恥心の雨だらけの今、もう何が恥ずかしいのか分からない。    
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