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熱の篭った真っ直ぐな眼差しに喉の奥が震えた。胸から迫り上がる感情は言葉にならず、やがて温かい涙に変わる。
「……ち、ひろ、く、」
思えばずっと彼は真正面から私にぶつかってきてくれた。戸惑い困惑する私が誤解しないように言葉と態度で伝えてくれた。
「わたし、も」
味気ない日常に色をくれた。
誰かと過ごすことがとても楽しいものだと教えてくれた。
志築くんが、ただ、傍にいてくれるだけで、私は少しだけ変われた気がしたの。それは錯覚だったけど、彼はいつも楽しそうに笑ってくれたから。
「…好き、です、」
少しだけ自分が好きになった。
少しだけ自信が持てた。
志築くんが、こんな私を好きだと言ってくれたから、ちょっとだけ自分が自分でよかったと思えた。
「…す、き、」
「彩羽、……ぁあ、夢みたいだ」
生まれて初めて「愛」を知り、「愛」に触れた夜。その歓びに打ち震え、涙が止まらなかった。
彼は瞳に涙を滲ませて「夢みたい」とこぼしたけれど、それは私の台詞だ。
「夢、なら覚めなたくない、わ」
「…夢なら泣く自信ある」
ふふふ、と涙を滲ませたまま笑い合った私達はどちらからともなくキスをする。
唇を離して見つめ合い、僅かに開いた唇にお互いの視線をやってまた唇を重ねる。
視線が物足りないと強請り、離れては重なって、また離れては磁石のようにくっついて。
触れ合えば触れ合うほど欲深くなり、もっと、と互いを求めた今体温を分け合って。ありったけの想いを込めて抱きしめ合えば、彼は満を辞してゆっくりと腰を揺らし始めた。
「ごめん、動きたい」
はぁ、と熱く深い溜息と共に熱烈な視線が私を上から嬲った。ただ、見下ろされているだけなのに、丸裸にされた気分で落ち着かない。
恥ずかしくて全部を隠したくなるほど堪らないのに、彼には全て知ってほしいと思う自分もいる。
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