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包み込まれたものがなくなって寂しくて目を開けた。隣から気配が遠ざかりそうになって思わずその手を伸ばしてしまう。
「起こした?」
志築くんが起こした身体を捻ってこちらを向いた。彼は表情を緩めると上から覗き込みながら頬を撫でてくれた。
「身体大丈夫?ごめん。無理させた」
しゅん、と耳を垂らして尾っぽを下げて謝る志築犬。そんな彼に否定の意味で小さく首を横に振った。
全てが初めての私はあれが無理したのかどうかわからなかった。ただ、ひとつだけ言えることは初めてのわりにちゃんと形になっていた、ことだ。
全て彼任せで申し訳ないけれど、おかげでちゃんと形になった。それだけで満足だった。
「あんなにも縋られたら、……意地悪したくなったんだ」
満足した私とは対称的に懺悔を始める志築犬。ベッドから出て行こうとした彼は、私に許しを乞うようにベッドに戻ってくると、背後からぎゅうと抱きしめて肩に顔を埋めた。
「……彩羽が可愛すぎて、死にそうだった」
耳元に落ちる感嘆の呟きに羞恥で顔が染まる。
そんなことで人間は死なないと思うけど、と言いかけたが、咄嗟に言葉は飲み込んだ。
でも、彼が嘘でもなく冗談でもなく本気で言ってくれているのはわかる。その証拠に肩におでこをぐりぐりと擦り付けて「だから自分は悪くない」と言う。
志築くんがなんだかかわいい。
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