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 その屁理屈を堂々と言うあたり、社会人としてどうかと思う。きっといつもの私なら「この人大丈夫?」と思うんだろうけど、志築くんだからか「か、可愛い」とトキメいてしまった。  どうかしている。だいぶ毒されてる。  それでも、こんな屁理屈を素直に伝えてくれる彼の言葉が嬉しかった。 「それなのに、人の顔見て逃げようとするし、悲鳴あげるし、酷すぎじゃない?」  私を見下ろしながら恐ろしい顔で言うセリフじゃないわね。でも「身の危険を感じた」とは言ってはいけない気がするわ。  「……ごめんなさい」  「分かってくれればいいよ」  案外すんなりと許されて「あれ?」と首を傾げた。もっとしつこく言ってくるのかと思ったのに。なんだ拍子抜け。  「ちょ、っ、とぉー!」  ホッとしたのも束の間。まるでそのタイミングを待っていたように彼はそそくさとニットワンピースをたくし上げてタイツに手をかけた。思わずその手をがっちりと掴んで彼の方に押し返す。  「なに?」  「分かったけど、早い」  「それ分かってないよ」  とても残念な目を向けられたけど、それはむしろ私の方だ。  「俺ね、昨夜、本当はもう一回したかった。もっというと、朝起きた時にも」  え゛  「でも、彩羽の身体のこともあるし、そこまでがっついて嫌われたくないから我慢した」  顔に熱が集まるのがわかる。  カーッとして、顔が赤い自覚もあった。  志築くんの手が優しく、私を宥めるように額から前髪を梳き、一房取るとそこに口づけた。  「でも、もう我慢しなくていい?」   熱を孕んだ瞳は逃げも隠れもしなかった。  ただ、純粋に「彩羽が欲しい」と言われているようで、心臓がバグッと揺れる。
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