プロローグ

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____女の子は生まれた時から必ず誰かのお姫様なんですよ。  当時ドはまりした漫画のセリフに大きな衝撃を受けた。胸が震えて喉の奥が喚いた。目頭がほんのりと熱くて鼻を啜ったことを覚えている。 ____騎士は私でいいですか?  このヒロインが羨ましかった。  こんなセリフを言われてみたい、ととても強く願い焦がれた。  それと同時に、こんな私も誰かのお姫様で、ヒロインのように守ってくれる騎士が現れるのか、と信じられない気持ちと信じたい気持ちが複雑に絡み合って胸が苦しかった。  何度もそのシーンを読み返して、脳裏に焼きつけた。セリフなんて覚えてしまうほど、本に穴が開くぐらい読んだ。  ヒーローの表情もヒロインの嬉しそうな笑顔も、想い合う二人はこんなにも優しい顔をするんだ、と胸をときめかせた。  そして、いつか私にも、とひっそりと夢を見た。  イケメンじゃなくてもいい。白馬に乗った王子様なんて言わない。  ただ、こんな私を丸ごと愛してほしい。  人生は長いから一人ぐらいいるかもしれない、とどこか期待を持ってワクワクしたことを覚えている。        
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