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「もう、待てないの?」
志築くんは困ったように笑いながら彼の下着の上から撫でる指を掴んでやんわりと止めた。
「まて、る、の?」
智紘くんこそ、と付け加えれば彼はふにゃりと相好を崩す。
「白状するとギリギリ。でも、我慢したら我慢しただけ気持ちいいから、待てと言われたら待てる」
もしかすると、彼はドMなんじゃないかしら。
ぼんやりとする頭で、肩で息をしながら決して口に出してはいけないことを思った。
なぜなら、きっと彼は否定するだろう。
そして、また倍返し以上の仕打ちが待っている。
そんな気がした。
「彩羽はどうして欲しい?」
もう少し苛められとく?と彼は「コンビニ行く?」みたいな感覚で訊ねてきた。いや、彼にはそのつもりはなかったとしても初心者の私にはとても軽く聞こえた。
「も、むり、です」
「無理って、やめるってこと?」
「どうして、そんな、いじわるいうの!」
絶対彼はそんなこと言って揶揄っているだけだって分かってる。分かっていても、なんという仕打ちだ。ひどすぎる。
「まだにかいめなのに」
「っ、ごめん、彩羽。俺が悪かった」
本気で泣きそうになる私に今度は志築くんが慌てる番だった。
「てかげん、して」
「すみません」
「いじわるしないで」
不思議だ。こんな状況なのに、私は自分がこんな風に彼とコミュニケーションが取れていることに気づいて驚いた。
そして、しゅんとした志築くんを見上げてつり上がった眦が下がりそうになって慌ててまた吊り上げる。
だが、志築くんは誠に申し訳なさそうにバッサリと切り捨てた。
「ごめん、それは約束できない。……彩羽を苛めたくてしょうがないんだ、俺」
前言撤回。彼はとってもエスっけが強いらしい。(志築犬のクセに)
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