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結局志築くんも達してしまった。
脱力して彼の胸に倒れればそのまま抱きしめられてぐるんと身体が回転した。
抵抗もできないでされるがままになりながら、なんとか抗議の声をあげる。
「びっくり、した」
「うん、ごめん。でも抱きしめたかったら」
ゆるして、と言われたら許さざるを得ない。
そんな可愛いこと言われて拒否したら、私が悪者みたいだ。
「……抜かないの」
「少し余韻に浸らせて」
うん、と言ってしばらくすると私の中から彼が出ていった。ホッとしてだけどちょっと寂しい。
「……ごはん、」
「明日の朝にしよう」
「……そうね」
「うん」
何か喋らないと、と思ってなんとか捻り出した言葉が「ごはん」だった。とても食いしん坊みたいだけど、おかげでこの静かな時間が少し緩和した。
「……明日さ」
彼の腕に抱かれてどこを見ていいのかわからなくてただ、くっきりとした喉仏の辺りを眺めていると上から声が落ちてきた。
つられて見上げれば穏やかな笑みを浮かべている彼と目が合う。
「ずっとベッドでごろごろしてよう」
「……えー」
それはつまりその、
「……堕落生活の始まり」
「フッ、なにそれ」
思わず呟いた言葉に志築くんが吹き出して笑った。遠い目になる私とは対照的に彼の目元は涙が滲んでいる。
「何、その堕落生活って」
「欲望に忠実な生活」
「どこが堕落?いいと思うけど。欲望に忠実って」
彼はそう言うけれど簡潔に1日の流れを言えば。
「寝て、食べて、寝て、食べて、寝て、食べて、寝る」
「セックスして、食べて、セックスして……って、俺からすればずっと食べてるのか」
「た、食べてない!」
「要は、抱きたい時に抱いて、疲れたら寝て、腹減ったら食べて、食後の運動して」
「運動はいいです」
「彩羽はもう少し体力つけようか」
ニコリと笑われて思わず半目になる。
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