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お腹がいっぱい、眠い。と志築くんはあくびをしながら伸びをした。
ぐう、と両手を突き上げる姿を見ていれば涙目の彼と目が合う。
「彩羽は、眠くない?」
「今のところ」
「そう。でも俺は眠い」
だから寝よう、と彼はソファーから立ちながら私を誘う。手を出されて、自然とその手を取れば、足は寝室に向かった。
「昼寝するから枕になって」
「本当に堕落生活ね」
「年末年始はずっとこうして過ごすんだ」
さすがにそれは、と喉まででかかった言葉は出てこなかった。かわりに「ひっ」と小さな悲鳴が漏れる。
「急に危ないわね」
「大丈夫、大丈夫」
「もう」
志築くんは私をベッドに引きづりこむと、私を抱き込んでしまった。
もう定位置になりつつある場所に頭をのせる。
「彩羽が寝てるのずっと眺めてたから、寝不足なんだよ、許して」
え?
なんか聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
目を丸くする私に彼は可笑そうに笑いながら髪をくしゃくしゃに撫で回す。
「ちょっとだけ口開いてたの、可愛かった」
カッと体温が上がった。
恥ずかしくて死にそう。
「キスしても起きないしね。彩羽は眠り姫になれないね」
「…姫じゃない」
姫なんて、もう。それにアラサーだし。
「眠り姫にはなれないけど、彩羽は姫だよ」
クスクスと笑いながら彼は私の頬を撫でる。
そんな彼を見上げながら、彼の部屋着をぎゅっと握りしめた。
「そうだね、そしたら俺は騎士ぐらいでちょうどいいかな。王子ってなんか違うし」
「……そう、なの?」
「ほら、騎士の方がお姫様の近くにいられるじゃない?」
ドキドキと心拍数が上がる。
昔大好きだった、漫画のシーンを思い出した。
セリフも状況も違う。部屋着でベッドですっぴんで。全くロマンチックな要素がないのに。
「それに、堂々と守れるからね。俺が騎士で良いですか?お姫様」
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