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「あら、噂の新人君ね」  誰が話したのかなんとなく想像はつくけれど志築くんの噂はこちらまで届いていたようだ。  そういえば、フラワーリストの方やカメラマンさんなどうちに出入りする協力会社の皆さんは既に存じ上げているようだった。    「本当、ますます勿体ないわね。でも、男性にもすごくモテそう。わかるわ~」  ジョワのオーナーである、池上さんが片手を頬にあててコテンと首をかしげながらしみじみとため息をついた。  その様子を志築くんがどうすればいいのかと躊躇いながら苦笑いをしている。  「池上さん。志築智紘さんです。今後出入りするかと思いますので」  「あらやだ。自己紹介がまだだったわね。池上佐和子です。彩羽ちゃんより一回り以上、上だけど同じサワちゃんとしてナカヨクさせてもらってるのよ~」  池上さんは明るくて溌剌としていて見ているとこちらが元気になれる女性だ。人生の大先輩ではあるけれど、プリエールに来る以前から知り合いだったこともあり、とてもよくしてもらっている。  そして、唯一私のことを「彩羽ちゃん」と呼んでくれる人だ。  コミュ障で友達もいない私には家族並みに稀有な存在である。 
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