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 「よかったわね~、彩羽ちゃんが補佐なんですって?表情は乏しいけど、心根は優しくていい子なのよ」  あはは、と笑う元気印の塊のような彼女はさっそく智紘くんをおしゃべり相手と認識してしまったらしい。  志築くんも人が良いせいか律儀に返している。  「知り合って長いんですか?」  「そうよ~。だから彩羽ちゃんのことならなんでも聞いて」  おかしいわね。ドレスを見に来たはずなのに、まだ一着も触れていない。  そもそも、ここから一歩も動いていないわ。  「池上さん、仕事中です」  「もう、真面目ね」  「説明お願いします」  「わかったわよ~」  はいはい、と池上さんが肩を竦めて踵を返した。ドレスを着たマネキンが複数展示されている店内の奥にある階段を上り二階に向かう。  「ここがウエディングドレスね。で、こっちがカラードレス。男性はこっち」  池上さんの説明が始まった。志築さんにドレスの造り、縫製の仕方などひとずつ説明をしながら店内を見て回る。担当を持った際にお客様に説明しないといけないことだ。  特に新婦様は気になるところだろう。  志築さんは真剣に話を聞いてメモを取っていた。
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