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 「お待ちしておりました」  「突然悪ィネ」  「とんでもない。わざわざこちらまで来ていただいてありがとうございます」  少し離れた場所で志築くんの様子を窺った。  お客様は男性ひとり。  志築くんに負けず劣らずの長身でイケメンだ。  普通なら、打ち合わせスペースに案内するはずが、彼はそのままロワに向かう。  そして、ジャルダンの灯りを付けて何やら説明をしていた。  その説明は遠くからだと聞こえなかったけど、何を話しているのか何となくわかる。  そして、ようやく打ち合わせスペースに迎えば、私の存在を確認して温かい飲み物をお願いした。  「もっと早く言いなさい」  「すみません」  志築くんは苦笑する。  私は彼に言われた通り飲み物を持ってお客様の元に向かえば、二人の会話はとても弾んでいた。  「アー。良かった。とりあえず仮押さえしておいてもらっていいカナ?やっぱもう少し早くくるべきだったって思ったけどなンとかなるンだなあ」  男性のお客様は腕を組んで椅子の背もたれにもたれかかると「ヨカッタゼ」と笑う。  「こちらこそ、凄く助かりました。もうこの時期だとやはり難しいですから」  「ダロウナ。準備もいるからナ」    
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