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 「助かりました。ありがとうございます」  「何もしてないけど」  「大丈夫です。峰さんがいるだけで安心感が全然違いますから」  志築くんはその後少ししてオフィスに戻ってきた。お客様と話をしていたのはほんの二十分程度。  それなのに、五月の土曜の昼の部でジャルダンを押さえてきた。しかも150人の立食だ。  「クリスタルで勤務していた頃、名刺渡していたんですよ。それでわざわざ辞めたって聞いてプリエールに電話くださって」  実際に成約には至らなかったものの、その方は志築さんの名刺を捨てずに持っていたらしく、先程のお客様にお渡ししたらしい。  「『五月の土日のどこかでパーティーをしたいんだがキャンセルや空きはないか』と先に窺っていたんですよ」  志築くんがニヤリと笑う。  彼が提案したのは、つい先日結婚式を延期したいと申し出があった日。繁忙期ともいえる五月の土曜の昼間、ぽっかりと空いた穴を埋めたそうだ。  
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