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 「だから大丈夫だと言ったでしょう?」  ちなみに、今すぐは見積は出せないと伝えているため、後日ご来館された時にお渡しするという。その際、試食も行うらしく、志築くんがウキウキとしていた。  「ドレスはどうしても持ち込みたいから、持ち込み料払ってもいいと仰ってました。ちなみにオーダーメイドのアンジュのドレスらしいですよ」  な、なんて言った?今。  「凄いなあ。イチ企業の社長がアンジュをオーダーメイドするってよほどですね」  「え、ええ。そうね」  「いくらでも持ち込み料を払うから許してくれって言われました」  いや、むしろオーダーメイドのアンジュを拝めるなら、寧ろこっちがお金払いたいぐらいよ。  「あのレース縫うの大変だろうなあ。それをたった数回の為に買うのか。着終わったら回してくれないかな」  「……同感だわ」  池上さんは泣いて喜びそうね。  レンタルでもいいからって飛びつきそうだわ。  「峰さん、もう大丈夫ですよ。あと俺やっときますんで」  「そう?」  「はい。カルテだけ書くのでお先にどうぞ。さっきは助かりました」  「お茶だしただけよ」  それでもですよ、と志築くんが笑う。  それじゃあ、と彼に挨拶をしてその場を後にした。  
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