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 昨夜早速志築くんは各提携企業に連絡をいれてくれていたらしい。  スケジュールの返事についてはこれからくるだろう。    私もうやることないんじゃない?というぐらい段取りがいい。  「じゃあ、志築はもう今週からデビューするか」  「あ、はい。お願いします」  「峰、頼んだー」  支配人は「よろしく」と手を振ってオフィスを出て行った。きっと事務所に行ってコーヒーでも飲むのだろう。  いつもこう、丸投げなんだから。  腰に手を当ててやれやれと思っていると、9時を5分過ぎた頃に連絡が入る。  電話を取った島谷さんが「少々お待ちください」と受話器を置いた。  「志築さん、お電話です。香月様から」  ちょうど今話題の人物からの電話だった。  「キャンセル?」「やっぱり?」なんて皆揶揄い口調で志築くんに注目する。  彼は肩を竦めて受話器を取ると、肩に受話器を挟んで、パソコンのキーボードを操作し始めた。  「あー、かっこいい。あれで男性が好きって残念すぎる」  「でも、その方が世の女性の為かもしれないわ」  「そうだけど、どんな人を選ぶかも見てみたいじゃない」  ……またか。    志築くんが「男性が好き」と宣言した後、それでも諦めきれない、という彼女達の心の声に辟易した。  私は人を好きになったことがないのでわからないけど、彼女たちを見ていると大変そうだと思う。  
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