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志築くんは電話を切ると慌ててパソコンを叩き始めた。どうしたのだろうか、と確認すれば、今からプリエールにくるという。
「え?もう」
「はい」
志築くんは「やばい、全然金額出せない」と頭を抱えている。
そういうときは概算しかない。
アンジュのドレスをオーダーメイドするぐらいなら、それなりにお金はあるのだろう。
「とりあえず全部Aランクで出しましょう」
「え?そうなんですか?」
「上限見せれば問題ないわ。お金は持ってそうだし」
「そうですが」
「だからってぼったくるわけじゃないから安心しなさい」
志築くんはひとつ頷くとカタカタとキーボードを走らせる。
私はお客様を出迎える為に玄関に向かった。
「へえ。いいじゃん。ここ空くの?」
昨日いらした香月さんともう一人、木下さんという男性がいらっしゃった。彼が会社の財布を握る人物らしく、香月さんは手っ取り早く連れてきたという。
「昨日の今日で悪いネ」
「とんでもございません。ただ見積ですが、」
「アー。ソレに関しては概算で構わナイゼ」
「税金対策なので、むしろドーンと出してくださって構いません。来月決算でその経費に乗せるので、高ければ高いほど」
「赤じゃなければ問題ネェナ」
「むしろプラスにしかならないと思う…。けどそれは来期でなんとかすればいいでしょ」
暦上はいくら春といえど、まだまだ寒くジャルダンはとても寒々しい。
お二人にはジャルダンでのパーティーの様子をイメージしていただけるよう、近年のジャルダンでのパーティーの様子を写真や映像で観ていただけるよう過去のフォルダを漁った。
志築くんはお二人に改めて主役のお二人のお人柄や好みなどをヒアリング。カルテに記入しながら、今回のパーティーでの希望を確認する。
ジャルダンでのパーティーの様子がまとまったフォルダを志築くんに送る。彼はお二人にその写真や映像を見せながら、説明を始めた。
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