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 志築くんがオフィスに戻ってきたのは、電話が鳴って二時間ほど経った頃だった。  初めこそフォローに回ったものの、途中から大丈夫そうだったのでオフィスに戻った。  そして戻ってきた彼は少々ぐったりしていた。  「おつかれー」  「朝一から大変だな」  町田さんと島谷さんがそろって声をかける。  志築くんは「ははは」と乾いた笑いを浮かべながら椅子に腰を下ろした。  彼らの要望はやはり想像以上だった。もちろん会社を上げてのパーティーだ。しかも創設者である代表が結婚するとなれば下手なことはできないとのこと。  主役である新郎本人は顔を顰めているらしいが、周囲が黙っていないので仕方なくやるパーティーらしく、彼ら二人が指揮を執ることになったとか。  そのため、彼らの気合の入りようときたら。凄まじいというか、ただ代表がちょっとばかり可哀相になるほど。  というのも豪華絢爛キンキラ案が飛び出したりしたとか。  うちはそういうコンセプトじゃない、と志築くんがやんわりと伝えたものの、日ごろのうっぷんがたまっているらしい彼らはこの会でちょっとした仕返しを企んでいるらしい。  「盛り上がるのはいいですけど、ちょっと疲れました」  通常パーティーには色んな金額が含まれている。  うちは、会場費、お料理代、お花、お召し物(ドレス、タキシード)引き出物、写真、司会進行、招待状作成などの総額で提示する。  もちろん、お料理やお花のランクによってプラスマイナスは出てくるが、今回提示したランクは全てAランク。ここにドレス持ち込み料金が含まれる、というとてもシンプルな算出方法なはずだけど。  「ドレス持ち込み、司会は不要。プログラムなどもご自分達で決めたいとのこと。食事はビュッフェスタイル希望で食事は参加者の1.5倍、ドリンクは2倍の準備。また、このようなアーチとフラワーロードで花道を作ってほしい、と仰ってました」  つまり基本プランが殆どない状態だ。  さすがに一本目のパーティーにこれほどのイレギュラーはキツイ。志築くんが遠い目になるのも頷ける。  
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