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 「本当はホテルの運営側やりたかったんです」  まさかのプランナー志望ではない、カミングアウトに丹羽さんと島谷さんは驚いて声を上げた。  志築くん曰く、裏方志望が、何故か異動でブライダル事業になったらしい。  少々不服そうにむっすりしている。  「でも、続いてるじゃない」  「合ってると思うけどな」  「うーん。まあ、合ってないわけではないですが」  きっと彼は器用で何処でも対応はできるだろう。人当たりもいい。聞けばクリスタルに居たときは、フロントでも働いていたそう。  だからこそ、ホテルの運営に関わりたかったのかもしれないけれど、幸か不幸かプランナーになっている。  「峰さんは?」  志築くんから回ってきたパスに一瞬驚いたものの、私の出る幕はなかった。丹波さんが代わりに答える。  「峰さんは、裏方のスーパーマンだから」  「そうそう。プリエール立ち上げの時に支配人が無理矢理引っ張ってきたの」  「それまではどちらに?」  「同じ系列レストランだけど、事務だっけ」  「ええ」  「仕入れとか経費とか細かいこと諸々とな」  言えば誰もが「峰さんっぽい」という。  だけど、本当はちがう。自ら志望してついて来た。  ただ、ブライダル業界に憧れていた。  安直だけど、誰もがお姫様になれるその日を、一番近くで見たい、という理由だ。          
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