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 深紅の花道を縁取るフラワーロード、それを飾る花のアーチ。  お色直しにご新婦様がヘッドアクセサリーとして身に着けられた花冠はご新郎様の手作りのもの。  色々と彼らの拘りが詰まったパーティーは結果として、大盛況に終わった。  途中、招待状を持っている人が持っていない人も引き連れてきたり、食事も飲み物も足りなくなって慌てたり、ゲームが大盛り上がりでブライダルフェアにいらっしゃったお客様が何事かと足を止めてしまい、会場内で小さな渋滞が生じたりと少々イレギュラーなことが発生したものの、概ね何とか予定通りに終了した。  「いやぁ、イイパーティーだったナ」  沢山アルコールを浴びたらしい香月様が、パーティー後控室の椅子に座り、ご機嫌にそう仰った。  上着を脱ぎ、暑いと腕まくりをして涼んでいるが、目も泣いたようで真っ赤だ。  木下様は「なんか色々イレギュラーばかりで申し訳ない」と苦笑している。  まさか、招待状を持たない人が来るとは想定外だったらしい。おまけに仕事上知り合いではあるため無下に断れなかったようだ。  「柔軟に対応してくださって助かりました」  「もったいないお言葉でございます」  志築くんは志築くんで恐縮している。それもそのはず。やはり、経営者とあってご参列くださった方の中にはまぁまぁ有名な方もいた。  志築くんに至っては、クリスタルホテルの元会長、里中氏がいらっしゃったことに言葉を失っていたぐらいだ。  彼にとって、元職場のトップに君臨するお方。現在は第一線を退いてのんびりしているらしいが、志築くんが知らないはずがない。  そんな里中氏とフランクに話すご新郎様、そして香月様と木下様に「この人たち何者」と思ったらしい。  「里中の爺サン元気だったナ」  「文句百ほど垂れてたけどな。どうしてクリスタルじゃないんだって」  里中氏からすればそう言いたくなるのも分からなくもない。  ただ、それを聞いた私達には上手く返す言葉はなく、曖昧に微笑んでやり過ごすしかなかった。    
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