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 「峰、ちょっといい?」  成績発表が終わり、一息付こうとすれば支配人に呼ばれた。  なんだろう、と不思議に思いながらおいでおいでする彼のもとに向かう。  「明日、悪いけど出てこれない?」  「……」  「一時間でいいから」  明日、火曜日は式場が休館日だ。祝い事に火はダメらしく火曜が休み。  つまり、月曜が金曜みたいなもの。そして、あとの休みはどこでも自由。シフト制である。ちなみに今週私はもれなく水曜が休みで連休だ。  「…今日じゃ駄目なんですか」  ただの一時間なら今日残業すればいいだけ。  そう思って訊ねたのに、支配人の歯切れの悪さに思わず半目になる。  この五年、支配人とプリエールで共に仕事をしたが、彼に「一時間でいい」と言われて一時間で済んだ試しがないし、この反応は何かあると読んだ。    「実は」  支配人はきれいにセットした髪をくしゃくしゃにしながら肩を落とした。  なんでも急な人事があり、週明けから新しくプランナーが入るらしい。  「クリスタルグループでプランナーをしていた奴を社長がひっこ抜いてきたんだよ。そんで、そのまま"任せた”って」  
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