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 ただ、それを私に言っても良かったのだろうか。私が他の人に話すとは思わなかったのだろうか。    「聞いてよかったの?」  「はい、もちろんです」  「誰かに漏らす可能性はあるでしょ?」  「もし、俺の秘密がバレた時は支配人のせいです」  彼は支配人にも伝えているらしい。  たしかに口を滑らせそうな人ではあるけれど、まあ大丈夫でしょう。  「峰さんは恋人は?」  「いないわ」  「好きな人は?」  「いないわ」  キッパリとハッキリと言い切った私に志築くんがなんとも複雑そうな顔をする。  眉を下げて、半分だけ笑った顔だ。  「この状況に何か気づくことありません?」  志築くんの言葉に首を傾げながら周囲を見渡してまた首を傾げた。  「特に何も」  「……そうですか」  彼が少し遠い目をする。    「…峰さん、明日何しますか?」  表情をキリッとした彼が徐に訊ねてきた。    「明日は冷蔵庫の中身を掃除します」  「つまり、予定なしですね」  「どうしたら、そう捉えられるのよ」  「どうもこうもそう捉えるしかないでしょ」  志築くんが呆れている。  彼が呆れる理由がわからない。  
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