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志築くんの頭の中を一度、覗いてみたい。
どうしたら、そういう発想になるのか全然分からない。理解できない。思考回路はショート寸前、今すぐ説明求めてもいいわよね。
「……揶揄ってるの?」
お行儀悪く机に溢してしまったお茶をおしぼりで拭きながら、空いた手でナプキンを取る。
それで口元を拭いながら視線を上げれば、彼は頬杖をついて不貞腐れた顔をしていた。
え。そんな顔するところなの、ここ。
「……峰さんって鈍感ですよね。一応この話、さっきから繋がってるんですけど」
鈍感と言われてもよく分からない。敏感でもないかもしれないけど、それなりに察しはつく方だと思ってるんだけど。
「繋がってるって」
「カモフラージュの話」
その話ね、と頷きながらさっきの話を思い出す。確か、最初はどうしてカモフラージュをする必要があったのか、というところだ。
そんなことを考えていると志築くんが席を立った。会計が記載されたレシートをスマートに攫うとそのままレジに向かってしまう。
「ちょっと、志築くん!」
あの初めての一度以外はずっと割り勘だった。
なのに、今は「会計は一緒で」と言っているのを聞いてしまった。
「こういうときは“ありがとう”でいいんです」
ちょっとだけムッとした彼に仕方なく従う。
先に外にでて(とは言っても金額は知っているけれど)待っていると飴を二つ持って志築くんが出てきた。
「どっちがいいですか」
コーヒーとバニラ味。私は迷わずバニラを選び、鞄の中にしまった。
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