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 志築くんは少しだけ眉を下げて目を細めた。  まるで、小さな子どもを心配する親みたいだ。  「もう一つ言うと、峰さん、悪い人に騙されるタイプですよ。こう言っちゃ失礼ですけど、扱いやすそうですから。純粋ですし」  「……騙されるタイプ?」  「ええ。雛鳥と同じです。初めて見た生き物を親だと信じるのと同じで、恋人になれば凄く尽くしそうです。危険なぐらい」  「………騙されるような恋愛はしてないわ」  今までもたったひとりだけ。しかも学食デートしかしたことがないもの。  社会人になって仕事に邁進してきた。  沢山のお姫様をお見送りしてきたけど、考えてみれば、ブライダル業界って完成されたお二人の祝いの場であって、出逢いの場ではない。  プランナーに独身が多く、出会いが無いとぼやくのは必然のこと。  それに、ここは女性社会。  和気藹々として楽しいけれど、私みたいな人間はその場に入れない。  そんなキャラじゃないし、誘われてもどう振舞えばいいのか分からなかった。  「なら、間に合ってよかった」  何が、と言いかけて固まった。  スローモーションで近づいてくる志築くんの顔がゆっくりと傾く。  「ついでに、俺に騙されてください」  _____耳元で囁かれた瞬間。  頬にちゅ、と柔らかい刺激が走った。  それが、志築くんの唇だと気づくのに、そう時間は掛からなかった。
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