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 ほら、行きますよ。  そう言われて差し出された手にたじろいだ。  目が泳ぐのは、慣れていないせい。  「こっちの方がいいですか?」  志築くんは、「あぁ」と何か思いついたように肘を差し出した。  まるで、結婚式の新郎新婦みたいだと思って顔が熱くなる。  「フフフハハハッ」  そしたら何故か志築くんが大笑いし始めた。  目尻に浮かぶ涙を人差し指で拭いながら「行こう」と右手を攫っていく。  「すみません。彩羽さんが、あんまりにも可愛くて、ちょっと意地悪してしまいました」  どちらも選べなくてカチカチに固まった私を志築くんが笑い飛ばしてしまう。  ここで「俺嫌われてる?」と勘違いしないでくれないところが私にはとても有難かった。  「……どこに、行くの?」  「とりあえずベタですけど、映画ですね。彩羽さん、映画観ます?」  「特別好きなわけじゃないけど、観ないわけじゃないわ」  「そう。なら、問題ないか。平日だし、それほど混んでないと思いますよ」  志築くんは歩きながら私を見るとふ、と笑みを浮かべた。その後「天気がいいなあ」と眩しそうに目を細めて空を見つめる。  彼に釣られて同じ空を見上げれば透き通った透明の青が私達を優しく見守ってくれているようだった。
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