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 「あーー、面白かった!島谷さんがもう一度観たいという理由、分かりました」  映画はとても面白かった。  呪いを受けた王子と、呪いをかけた魔女の娘のラブファンタジー。  憎むべき魔女の娘に恋した王子が呪いを解くために彼女を伴い旅に出る。  魔法あり、バトルあり、恋愛要素ありという、大人から子どもまで楽しめる内容だった。  何より映像がとても綺麗でそれだけで満足だ。  映画が終わると興奮冷めないまま、志築くんと近くのカフェに向かう。そんな彼は相変わらず周囲の視線を総なめしていた。  「原作読もうかな」  平日のカフェは子どもを連れた女性達で賑わっていた。そんな中、志築くんが堂々と店に入るせいで、すごく注目を浴びている。  「小説、五巻まである。げ、まだ終わってない」  彼は若干落ち込むとスマホの画面を消してしまった。  テーブルの上にある、少し汗をかき始めたグラスのストローに口をつける。  「楽しめました?」  「ええ」  「どのシーンが印象的でした?」  彼は子どものように目を輝かせる。  その様子を少しだけ好ましく思いながらカフェラテをストローで啜る。    「戦闘シーンかな。初めの」  「あぁ、すごく迫力ありましたよね。音も凄かった」  「そうね」  結婚式場で働いているとどうしても音や映像には敏感になってしまう。一種の職業病のようだけど、仕方ないかもしれない。        
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