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「…彩羽さんは、誰かと一緒にいることに慣れた方がいいと思います。ひとりに慣れすぎてきっとここが麻痺してるんです」
ここ、と志築くんが指さしたのは彼の左胸。
心が寂しい、と感じられないのは感覚がおかしくなっているらしい。
「……前の彼とはどういうデートしたんですか」
「……学食を食べた」
「他は?」
「…………」
「…………え、それだけですか?」
まさか、と目を丸くする志築くんに曖昧に頷く。思わず俯いて視線を落としてしまうと、彼は「それなら」と幾分軽やかに柔らかい声で私を誘った。
「まず、来週どこに行くか決めません?どこでもいいですよ。行きたいところ、やりたいこと教えてください」
彼はスマホを取り出すとメッセージアプリを開いてバーコード画面を表示させた。
「連絡先、教えてください」
彼はQRコードで読み取れるようにしてくれたらしい。だが、残念ながら私はメッセージアプリをプライベートで使用していない。
というか、使えない。
なぜなら。
「………物持ちいいんですね」
令和のこの時代に、中学生でも持っているであろうスマホ。だけど、私は未だガラケーだ。
会社支給の携帯はスマホだけど、プライベートの携帯は、殆ど使わない為ガラケーのまま。
電話帳には父と母と支配人しか登録されていない。
自慢じゃないけど、八年前に母からかかってきた電話が履歴に残るぐらい私には携帯が不要だった。
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