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ねえ、どうしてそんなにも嬉しそうな顔をするの。
と胸につっかえた疑問を言葉にしようとして口籠った。
聞いていいのかどうか分からなくて、だけど聞いたらもっと戸惑ってしまいそうな気がしたのだ。
だけど、彼はそんな私の様子に気づいたらしく何も言わずにこちらを見ている。
「…なんでも聞いてください」
「………なんでも?」
「はい。聞かれて困ることなんてないですよ。むしろ俺に興味を持ってくれて嬉しい」
眉をハの字にしてクスッと笑った彼は「さあどうぞ」と催促した。
そんなノリこんなこと聞いていいのかしら、と思いつつ彼の顔色を窺う。
「俺、今日彩羽さんから何も質問されていないです」
「……質問」
「そうですよ。さっきから俺ばっかりじゃないですか。聞いてください。俺に興味を持ってください。なんでもいいです。出身地でも家族構成でも。なんでも」
若干拗ねたように唇を尖らせた彼はすぐに表情を和らげると目尻を下げた。
「大丈夫だよ」と言われている気がして、喉に引っかかった疑問を引き上げる。
「……私の、何がいいの?」
志築くんは、きっと軽い質問がくると思っていたんだろう。小さく咽せながら、飲んでいたコーヒーを溢さないように俯いた。
「……直球でしたね」
「………何でもいいって」
「いや、うん。まあ、そうですけど」
あはは、と笑う彼は背もたれに預けていた姿勢を正すと少し昔話を始めた。
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