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少しだけ雑に目元を拭い終えた志築くんは、コーヒーを一口飲むと質問の続きを促した。
「他、ないですか?」
「……ええ」
「出身地とか家族構成とか」
「神奈川県出身でご両親、お姉さんがふたりでしょう?」
「………あれ?俺言いましたっけ?」
志築くんは不思議そうに首をかしげた。
「いつ言ったっけ?」と思い出そうとしている。
「坂巻さん達に質問攻めされているとき」
「……あーー。はい、言いましたね」
志築はその時のことを思い出したのか眉を上げると少しだけ顔から表情を消した。
その時とは、志築くんの歓迎会のことだ。
お酒も入った彼女達は志築くんにとってとても迷惑だったのだろう。
「峰さん、聞いてたんですか?やらしいですね」
「……聞こえてきたのよ」
「フ。わかってますよ。だからそう怒らないでください」
冗談ですよ、冗談。
そう笑った彼は再び私に質問を催促した。
だが、今まであまり人に興味を持たなかったせいか、なかなか質問なんて出てこない。
だから、彼のパーソナルというより仕事に絡めた質問をしてみることにした。
「ラヴィーナで働いてたって言ってたけど、そのまま八神に就職しなかったの?そのまま正社員になる人も多いと思うけど」
「ぶっちゃけ、大変すぎて無理だと思って他の企業を受けたんですよ。学生だからこれで許されるけど、正社員って管理する側じゃないですか。しかも土日も普通に仕事なので友人と休みも合わない。土日休みの普通のサラリーマンになろうと思って八神には就職しなかったんです」
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