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 あまりにも明け透けな言葉に口籠もってしまった。勤務態度を見れば真面目だからもう少しちゃんとした理由があるのかと思っていたのに。  「俺はそんな真面目じゃないですよ」  彼は私の言いたいことを察したように、彼は続ける。だが、何の因果か結局はサービス業の社員になった。  「ただ、クリスタルの人事の方が凄く面白い人で結局土日休みの普通のサラリーマンにはなれなかったのですが」  「……本社に行けばなれるわよ?」  「そうですね。呼ばれたら嬉しいです」  通常、本社へ呼ばれる場合昇進という形になる。次に現場に戻ってくる場合は管理職で、プランナーには戻れない。  支配人は、どうしてもプランナーの都合がつかない場合フェアにでて接客にあたるが、基本的に後々の現場は他のプランナーに任されることになる。  ただ、どれだけ早くても現場を三年ほど経験しなければ呼ばれないはず。  また、プレジールのみではなく、他の式場だったり、八神の別事業を経験して本社異動だ。  「でも、現場が好きなんですよね」  彼は少し視線を外して照れ臭そうに笑った。  プランナーになるつもりはなかった彼なのに、今はもう、ホテルマンに未練はないらしい。
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