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 「テンプレ的なところでいくと、夢の国とか、水族館とか。あ、花火とかいいですね。この時期ならではの風物詩」  まるで昔の私を知っているかのような提案に冷や汗が止まらない。よくあるテンプレかもしれないけれど、憧れだった。  「あ。プールとか海はどうですか?水着、見てみたいです」  志築くんの一言に一気にテンションが下がる。  「え。どうしてそんな顔するんですか」  「……水着はもう十年着てないから嫌」  「え。授業でなかったんですか?」  志築くんに聞かれて小さく頷いた。中学校にはプールがなく、高校は選択制だった。    「Tシャツにショートパンツとかでもいいですよ?」  「………泳げないの」  そう、泳げない。私は金槌である。  「……意外ですね。美しいクロールとかしてそうなのに」  彼の中の私はいったいどんなイメージなんだろう。思わず半目になってしまったのは許してほしい。
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