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 だが、だからと言って「分かった」とは言えない。せっかくのお祝い事なのに、どうしてお店で美味しいものを食べないのだろうか。  「好き嫌いは特にないです。強いていえばグリーンピースが苦手です」  彼はキリッとした顔で「グリーンピースが苦手」だと宣った。そこ、全然自慢するところじゃないし、そんな顔して言うほどでもない。  「できれば和食がいいです。あ、お味噌汁飲みたい」  誕生日に味噌汁が飲みたいってお爺ちゃんですかって思わず突っ込みたくなる。  でもお味噌汁は美味しいので、よくわかる。  普通に毎日飲みたいものだ。こういうときは日本人でよかった、と素直に思う。  って。そういう話じゃない。  どうして作る前提で進んでるの。  「俺ん家で作ってくれてもいいですし、問題なければ彩羽さん家にお邪魔します。もちろん、食事をしたらすぐに帰ります」  いや、だから。  つくるとは言ってないんだけど。  「あ、ケーキもほしいです」  「……それはさすがに作れないわ」  お菓子作りなんて大昔、まだおばあちゃんが生きていたころに一緒にクッキーを作った。  砂糖が足りなくて全然甘くなかった上、捏ねたりなかったのか生地がボソボソで全然美味しくなかったけど。
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